晩夏のプレイボール
それぞれに野球にこめられた想いを綴る10話。
第一話 練習球
甲子園を目指す少年真郷。地区予選準決勝で九回の裏、ツーアウト、ランナーなし、点差は四。というところで代打に出される。
九回の表2点をリードされたまま見方が守備に入っているときに監督に準備しておけと言われてから、バッターボックスに入り一塁ベースを走り抜けるまでを描く。
7歳の時に野球を初め中学ではエースで4番、誰にも負けないという自負があった。
いくつかの高校から野球留学の話もあったがこの町から一緒に甲子園に行かないかという監督の手紙で地元の高校に進学する。
しかし高校三年になっての初めての練習日、野手への転向を言い渡される。
そしてこの日の代打。
終わっていない。まだ、終わりはしない。
真郷は一塁ベースの上を真っ直ぐに、走り抜けた。
第10話 練習球Ⅱ
ボールが転がる。眩しいほど白く輝きながら。一球の眩しさを忘れていた。と思ったのは律。
転がったボールは真郷が打ったものだ。
真郷。おれたちまだおわってなんかねえよな。
律はピッチャー、9回の表に追加点を許したとき、ここまでかと感じてしまった。
もう少し闘争心があれば一流のピッチャーになれるんだがなと何度いわれたことか・・・しかし挑みかかる感情はあまりに獰猛で荒らぶれていて、小学生の日々に引き戻してしまう。小学5年のときの執拗ないじめ、それは少年野球チームでエース気取りで生意気だという事が原因だったようなのだ。
一度棄て、真郷に会い、再び選んだ野球。
自分は野球を棄てなかったんだという自負は、律の中で静かに確かに存在する。その自負に助けられ、支えられてここまで来た。
もう充分やないか・・・・敗北を受け入れる準備を始める。
捨てられる運命にあった練習球の一つ、律は甲子園に連れて行ってやろうと思ってずっと持っていた。
真郷が打席に向かう途中「持ってきてるんか?」と聞く。
打席に向かう真郷に向かって右手を持ち上げる。
九回裏、ツーアウト、ランナー一塁、四点差。
つながった。真郷がつなげてくれた。「続けよ。真郷を還すんや」次の打者に向かい声を張り上げる律。今までの律には、こういう事はなかったのではないだろうか。
終わっていない。おれたちの夏はまだ終わっていない。
練習球はピッチャーから野手に転向を余儀なくされ、その試合のレギュラーにもなっていなかった真郷から見た野球。
練習球Ⅱはいじめのために一度は野球から離れ、真郷に一緒にやろうと言われ再び始めたピッチャーの律から見た野球。
お互いに相手がいたからこそ続けられた野球。このままで終わって欲しくないですね。
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