無人駅に降り立った洵と沙菜。
今日から二人はこの町に住むことになった。
お父さんは沙菜が生まれてすぐ交通事故で亡くなった。
おばあちゃんは3年前に亡くなった。
そしてお母さんが入院し春の間だけ洵と沙菜はおばあちゃんのお姉さん(風間琴音)の家で過ごす事になったのである。
駅に迎えに来てくれたのは千夏。
風間琴音の孫である。
琴音の家ではみんな洵のことを男の子だと思い込んでいた。
風間琴音がおばあちゃん(自分の妹)の葬儀の時に洵を見て男の子だと思い込んでしまったのが原因。
ちなみに千夏は男の子である。友達からはナツと呼ばれている。
風間琴音の家は『風の館』と呼ばれていて大きく、いかめしく『家』のイメージをはるかに超えるものだった。
風の館に住んでいるのは「ばあさんとおれの母親と田所さんと田所さんの奥さんの由さん。生きている人間は、それだけ」とナツの説明。
裏庭を囲む棟だけが千夏たちの生活の場、母屋とは廊下で繋がっているが、母屋に居るのは琴音だけ食事も別らしい。
ナツの様子がおかしい「何かあったらすぐ知らせろよ」
洵たちが使う部屋は何かあるのか・・・・
ナツが部屋から出て行くと「じゅん」
と誰かに名前を呼ばれる・・・が ドアは閉まったままだ。
廊下に飛び出しナツに「あたしを呼んだ?」
でもナツの声じゃなかった・・・
突風が戸をたたき、ぶつかり、ゆらし、音をたてる。
自然現象だと思えない。何が起こったのか、まるで理解できない。
部屋の窓が外側に開いている。いったい風は何処から来たのか・・・
ナツも「悪いけど・・・おれ、わけわかんないから」
こんなすごいのは初めてだけど急に窓ガラスがゆれたりとか、誰かに見られている感じがしたりとか、歌を聞いたりとかはあったようだ。
ナツは誰にも言えず、ずっと独りで背負い込んできたのだろう。
こんなことがあっても洵は不思議と怖いとは思えずこの部屋で生活することにする。
何日かたった夜、ふと目が覚めた。気配がしたのだ。
寝る前にカギを閉めたはずのドアが開いている。
洵は廊下に出て母屋に向かって歩き出す。
どきどきしているけど怖いわけではない。
風がもろに吹きつけてきた。思わず目を閉じる。息がつまった。身体が押される。足がよろめく。それほどに強い。
が、次の瞬間には、ぴたりと凪いでいた。
続く廊下を歩いていると話し声が聞こえてきた。
洵と誰かが似ているという・・・一体誰と似ているというのだろう?
後ろから「おれだよ」と声をかけられた。
話をしていたのは母屋にいる猫のカグヤと洵たちのところにいる猫のポロ。
後ろから声をかけてきたのが風間洵吾、風間琴音の長男だった。
ふたり(二匹?)の話している内容から洵は洵吾に「死んでるの?」ときく。
そう洵吾は何十年も昔に大雨の後の川の濁流に呑まれて亡くなっていたのだった・・・
次の日、洵はこの家の主である風間琴音に呼ばれる。
「洵吾に会ったんだって?」
琴音は洵吾が亡くなってから洵吾の気配は感じるが会っていないらしい。
風の声が聞こえ、カグヤと話ができると言う琴音。
この家を早く出て行きたいと思っているナツ。
普段は明るくて優しいが違う一面を持っているナツの母の果歩。
ここは、とても不思議なところ。ここに住んでいる人たちは、みんな心の中に光と闇を持っている。そして屋敷自体もまた・・・・
これからどうなるのか楽しみです。