吾郎はこの春、帝都大学医学部を卒業し、医師免許を取ったばかりの研修生。
全国から集まったよりすぐりの秀才の中でも特別に優秀な医学生だった。
卒業後の研修先として、最新設備が整い、高名な医師がずらりと名を連ねる、本院の内科を希望したが、分院に配属されてしまった。
分院は本院とは正反対の前近代的な病院で、医療機器も十分にそろっていなければ建物も老朽化している、どうしようもないおんぼろ病院である。
こんな病院で働いていたら、最先端の医療から取り残されるんじゃないか?
一日でも早くおんぼろ病院を脱出して、もっとまともな病院で研修する。来年の夏にはアメリカの大学院へ進学して遺伝子治療を専攻する。
吾郎は不満たらたらである。
一方、ゴローの方ははうすいブルーのパジャマを着た若い男の患者だった。肌が透きとおるように白いほかは特に変わったところはない、そこらのへんの街頭でギターをかき鳴らして歌っていそうな長髪の若者だった。
しかし患者であったのは6年前。吾郎がゴローと出会った日のちょうど6年前この病院にかつぎこまれて、その13日後に亡くなった・・・・幽霊だったのだ。
吾郎にグッド・バイブレーションを感じで姿をあらわしたらしい。6年間ずっとそういう人間を探していたと。
それから毎日午前1時から一番ドリが鳴くまでの間、病院の中庭のフェニックスの木の下で話をするようになる。
吾郎の夏休み・・・恋人と旅行がダメになったため姉の家族旅行に行く事になった(義兄が行けなくなったため)。ただで海にも行けて美味しいものが食べられると思ったのに甘かった・・・
双子の姪っ子の相手がそれはそれは大変で・・・病院で仕事しているほうが楽なくらい。でも幽霊の話をしてやった時の姪のレミの言葉にはっとする「ゆうれいってどうして出るの?」
ゴローは何かしら、この世に思いを残してきたに違いないと。
ゴローの頼みに一肌も二肌も脱ぐ事になる。今まで他人のためにこれほど一生懸命になった事があるだろうかとちょっと自分が不思議に思う。
ゴローの頼みを聞き届ける事ができ、吾郎は気づく。
がむしゃらに走っているうちに、いつのまにか大切なものをどこかに置き忘れてきたのかもしれないと。
医者はエリートであってはいけない。庶民の味方なのだから。医者である前に一人の人間だということを。
吾郎とゴローの話は笑え、読み終わった後にじ~んとくるお話です。吾郎にとってもゴローにとっても2人が出会えてよかったです。幽霊のゴローの頼みはちょっと意外なものでしたよ。
吾郎のようなお医者さまが増えてくれるとうれしいですね。親身になって話を聞いてくれたお医者様は心に残っているものですね。